JOURNAL vol.3
JOURNAL vol.3
ファッションを愛する人たちに
袖を通してもらいたい。
loopoolでは、秋に向けて新たなプロジェクトを進めてきました。
東京・大阪・名古屋のモード学園に在籍する3年生(昨年時点)からデザイン画を募集し、グランプリに選ばれた学生のデザインを商品化するというというものです。すでに最終審査を終え、モード学園名古屋校ファッションテクノロジー学科4年生の溝口夏菜さんがグランプリを受賞。今秋のローンチを目指し、デザインしたアイテムのサンプル制作も佳境に差し掛かっています。今回は、サンプルチェックも兼ねて東京を訪れた溝口さんに、プロジェクトに込めた思いを伺いました。
〝女性が自信を持って着られる服〟を
グランプリ受賞、おめでとうございます。世界観に溶け込みつつも、新しい風を吹き込んでくれるデザインであることが受賞理由だったそうです。loopoolが提案した生地と溝口さんのデザインに、繋がりが生まれるようだったと。どんなことを考えながら進めましたか?
〝loopoolとしての服〟をつくることが、1番の使命だと思ったので、私が最初に抱いた「洗練された流行」というブランドイメージを大切にしながら、ファッションを愛する人たちに着てもらえるものをデザインしたいと考えました。今日私が着ているレースのビスチェもそうですが、loopoolの服は色々な着方ができる自由度が高いアイテムばかりですよね。日頃デザインを考えるときも、スタイリングから思い浮かぶことが多いんです。
プレゼンではパフスリーブブラウス、フリルビスチェ、バルーンスカートの3アイテムを提案されましたが、こちらもまずスタイリングから想起を?
はい。主役になるフリルビスチェ→ブラウス→スカートという順に決めていきました。印象的なビスチェですが、実は着回し力抜群です! シャツに重ねるのももちろん素敵ですし、夏はインナーにタンクトップを着て左右のリボンでシェイプさせてタイトに着るのもいいですし、 冬ならハイネックに重ねても、テーラードジレの上にラペルを見せて着るのもいい……妄想が膨らみますね(笑)。左右のリボンで身幅の調整ができるので、着る人の好みや体型によってもシルエットを変えられます。今回はこのビスチェを商品化していただけると聞き、ワクワクしています。
着る人自身や好みに寄り添う、やさしい服ですね。
実は私、学生時代に陸上部だったからか、華奢とは言えない体型にいまだに悩むことがあるんです。スタイリングを考えるときにも、ヒップや腕まわりやお腹まわりが、どうやったら細く見えるか、よりよく見えるかを日頃から考えていて。きっと私と同じような悩みをもつ人はいるはずだと思い、〝女性が自信を持って着られる服〟を意識して、形、ディテール、生地を決めていきました。
サンプルの仕上がりはいかがですか?
もう、本当に素晴らしいです! ハリと落ち感のバランスのいいなめらかなウール生地選んだので、体の線に触れつつもシルエットは露わになりません。1番の主役であるフリルがここまで美しく立ち上がるのも、生地のおかげです。〝生地ありき〟でデザインを起こしていく面白さも、今回学ばせていただきました。
流行を掘り下げることで、ものの価値は洗練されていくと思う
先ほどloopoolのブランドイメージを「洗練された流行」と表現してくださいましたが、とても素敵な言葉だと思いました。
課題を進めるときに、たくさんの人が集まる名古屋駅の地下街や街をひたすら歩いて市場調査をしたんです。すると、今どんなものや色が流行っているのか、人が何に惹かれるのかが少しずつ見えてきました。「こんな風にファッションを好きな女性たちにかわいいと思ってもらえるものを作ろう。世の中にあふれるマスに向けたアイテムにはならないものにしよう」と、自分の中で大きな軸を決めました。流行を掘り下げることで、ものの価値は洗練されていくと感じたんです。そして、洗練されればきっと長く着ることができます。
服の「脱・短サイクル」は、溝口さんがプレゼンテーションの中でも話していたように、デザインの中で掲げたテーマでもありましたね。
授業で、アフリカのゴミ問題では洋服が最も大きなウエイトを占めていること知りました。これからファッション業界を志す身として、現状を見ないふりはできません。だからこそ、短いサイクルで手放されるものではなく、長く愛されるものをつくっていきたいと思っているんです。〝SDGsに根ざした服〟と聞くと、安っぽかったりすぐに壊れてしまったり…というイメージを持っている方も少なくないはずです。loopoolは生地のメーカーと直接やりとりをし、貴重で上質な生地を服として蘇らせていると聞き、革新的だなと思いました。SDGsに真正面から向き合いながら、ファッションとしてちゃんと高揚する。今回デザインした服も、手に取ってくださる方にワクワクしてもらえたら嬉しいです。
服の設計図を引くパタンナーとして最初の一歩を踏み出したい
現在は就職活動に励まれているところだそうですね。どんな道を志されているのですか?
デザインをすることも大好きですが、今はパタンナーを目指しています。母曰く、もの心ついた頃からダンボールで立体を作ってばかりいたらしいのですが(笑)、今もパターンを引きトワルを縫い上げて、ボディに着せるときが1番気持ちが上がるんです。平面のデザイン画が立体になる瞬間ですね。服の設計図をつくるパタンナーとして極めることができたら、今後描けるデザインや、思いつく発想が豊かになれるだろうなと思っています。
目指している大人像はありますか?
以前ドキュメンタリー番組に出演されていたブランドプロデューサーの女性の姿が印象に残っています。秘書から今の道に入られ、気遣いや周りの観察力、気づく力に感銘を受けました。いつか彼女のように、人を惹きつける力がある人間になりたい。何を気にするか、周りがちゃんと見えているか、自分主体で動くのか、周りファーストにして動くのかを丁寧に考えながら、一歩ずつ前に進めたらと思っています。
Photographer/Shota Yokokura
Writer/Sonoko Fujii
*グランプリ受賞商品は2024年11月上旬販売開始予定です。